ウン十年前、自宅にいながら英語を学習し始めた頃、たまたま手にした一冊の本がありました。 その本の著者こそ、私が日ごろ”英語のメンター”とお呼びしている松本道弘(まつもとみちひろ)さんです。
そして、その松本道弘さんが「この人こそ神だ」とまでおっしゃっていた人が、西山千(にしやません)さんという同時通訳者でした。
今回は、私自身の学習エピソードからちょっと離れて、 このお二人、つまり松本道弘さんと西山千さんのこと、そしてこのお二人が教えてくださった 「英語の本質」についてお話ししていきたいと思っています。
「神」とまで言われた通訳者ー西山千さんについての伝説
1969年、アポロ11号が人類で初めて月に降り立った歴史的な日。
日本中がテレビにかじりついていたその時、、、英語の中継を、日本語でリアルタイムに伝えていた通訳者が、西山千さんでした、
「同時通訳って、こんなにすごいことができるんだ!」 「まるで神業じゃないか、、、!」
そう感じた視聴者が大勢いたと思います。 実際、西山千さんはこの日の出来事をきっかけに、日本中の人達に広く知られるようになり、 一時期は「神」とまで呼ばれるようになっていました。
今はもう「同時通訳」という言葉は多くの人が知っている言葉ですが、当時はまだ、通訳者という仕事そのものが随分珍しかった時代でした。
そんななか、西山千さんは「言葉の架け橋」を行う人として、外交の現場、テレビの中継、国際会議などで大活躍され、「同時通訳者」という職業を、日本に定着させた第一人者なのです。 この人に憧れて英語を学習し始めた人、通訳者を目指すようになった人は、本当に沢山いらっしゃるようです。
あの西山千さんに見いだされたー松本道弘さんとの出会い
そんな「神」のような存在であった西山千さんが、ひとりの若い通訳者に目を留めました。 その人こそ、当時はまだ駆け出しだった松本道弘さんでした。
松本道弘さんの可能性を見抜いた西山千さんは、なんとアメリカ大使館での通訳の仕事に彼を誘いました。このことは、松本道弘さんにとって大きな転機だったに違いありません。
西山千さんと共に仕事をする中で、松本道弘さんは「通訳とは単に”言葉を訳す”ことではないのだ」ということを、身体の芯で学んでいかれました。
ある時、松本道弘さんはこんなことをおっしゃていました。 「通訳するとは、単なる言葉の作業じゃない。判断と覚悟の連続なんだ」 これは、言葉を超えた「人間としての在り方」を求められる仕事だという意味でした。
西山千さんは、そんな高い視座を持った人材として、松本道弘さんを見ておられたのだと思います。
数百冊の著作に込めた「考える英語」-松本道弘さんの哲学
その後、松本道弘さんは、英語学習者やビジネスパーソン、学生たちに向けて、なんと数百冊にも及ぶ著作を発表されていきます。 その中で、私が特に印象に残っているのが、「考える英語」という本です。 副題には「日本語を英語らしい表現に、発想転換法」と書かれていますが、これはもう”ただの英語学習本”ではありません。
文法の説明や単語の意味ではなく、英語という言語が持っている”視点”や”価値観”に、どうすれば自分の思考を合わせていけるか、、、そんな「発想の転換」がテーマになっています。
この本を読んた時、「日本語と英語を通訳するって、単に訳すことではないんだ」と、何度も気づかされたことを覚えています。 英語を学習するということは、「言葉の仕組みを覚える」ことではなく、「ものの見方を変える」ことだ!と目から鱗だったのです。
英語は”テクニック”ではない、”姿勢”なんだ
松本道弘さんが繰り返し話していた言葉です。 「英語を学習する目的は、単語や文法を覚えることじゃない。世界とつながり、日本を伝えることなんだ」
どうしても私達は、「英=スキル」「英語=試験対策のための一科目」と思いがちですよね。 でも、松本道弘さんにとって、英語とは「世界と出会う窓」だったのです。
そして何より、自分の国=日本について、英語で語れるようになること。 これを「最終ゴール」として、ずっと語り続けてこられました。
実際、今活躍している有名な通訳者や、予備校の人気講師、英語系ビジネスマンの中には、松本さんの直接、間接の教え子が大勢います。 彼らは、英語を”技術”ではなく”哲学”として捉えているのかもしれません。
「英語ができる」って、どういうこと?
今、「英語が得意」と言われている人の中にも、 ● 字幕なしで映画が見られない ● 英語の雑誌を読んでも頭にスッと入ってこない ● 外国人と雑談するのが怖い という方、実は結構いらっしゃいます。
これは、”知識”としての英語は身に付いているけれど、”生きた言葉”としては使いこなせていない、という事なのかもしれません。
松本道弘さんはこう言っています。 「知っているだけじゃ使えない。英語は”使ってこそ”意味がある」 英語は”道具”じゃなくて、”空気”であり”感覚”であり、そして何より”人との関わりを作る姿勢”なのです。
「師の師」を知る
松本道弘さんの考え方や英語観のなかには、常に”西山千さん”の存在があるように感じます。
自分の仕事に誇りをもって、通訳者という職業を文化として高めようとする姿勢。 そして、英語をただの言葉ではなく、「生き方」として捉える視点。 これらすべてが、松本さんから、そして西山さんから、今も脈々と受け継がれてきている気がします。
英語を学ぶとは、結局「生き方」なのです
ここまで読んできて頂いて、どう感じられましたか? 私は松本道弘さんの大大大ファンなので、ちょっと熱がはいり過ぎてしまったような気がします。 お聞き(お読み)苦しかったら申し訳ありません!
実は私、英語の学習を始めた当初から、松本道弘さんの出ているテレビ番組を欠かさず視聴し、 それも暗記するほど何回も(いや、何十回も)聞き、同じように話せるように繰り返し練習してきました。 本屋さんで松本道弘さんの本が目に付いたら、かならず購入してきました。家に帰ってから何度も読みました。
そして、西山千さんについては、実はそれ程知りません。いいえ、勿論知ってはいますが、著書を読んだり、その生き方や考え方を真似ようとしたことはあまりありません。好きじゃなかったというのではなく、あまりにも遠くの人だったので、知ろうとするのさえおこがましい、、という気持ちだったのです。
読者さんのなかで、もしかしたら違和感を感じられた方がいらっしゃったら、どうかこの回の記事はスルーしてください。もうお分かりのように、私、思い込んだら命がけの奴なんです。 では!
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