通訳者として働き始めた頃
私は30歳から60歳までの30年間ほぼ休むことなく通訳者として働いてきましたが、 通訳者の仕事を始めてから、およそ5、6年後に外国(アメリカ)に行くようになりました。
同時通訳者になったきっかけ
私が逐次通訳者から同時通訳者になった丁度その頃、日本でITや通信関連の国際会議が沢山開かれるようになりましたが、同時通訳者になりたての私は、会議の内容を自分で判断して受けるかどうか決めるなんてこと、できなかったのです。オファーが来て、その日が開いていたら、即OKしていました。こんなわけで、いつの間にか、自然にIT/通信専門の通訳者になっていたのです。
IT/通信業界の背景
今でもほぼ同じ状況ですが、ITや通信の分野は、アメリカと、(スウェーデン、フィンランド、デンマーク、ノルウェーなどの)スカンディナヴィア諸国とが、先駆者の地位についていました。(今の状況もほぼ同じですが)これは、世界の通信業界での一大発明をし、これによって世界の通信網を飛躍的に発展させたのがスウェーデンであり、通信業界最大の大手企業がアメリカのAT&Tだからです。 したがって私が仕事で出かける外国は、もっぱらアメリカと、(スウェーデン、フィンランド、デンマーク、ノルウェーなどの)スカンディナヴィア諸国でした。
始めての外国の仕事
同時通訳の仕事で、初めて行った外国はアメリカでした。その頃、私は日本でNTT関連の仕事に携わっていたので、その関係で私にオファーが来たのです。 もちろん、私にとっては初めての外国で、内心こわごわ出かけて行ったのですが、通訳自体は思ってたほど大変だと感じませんでした。でも、ま、何とかやれた!大きな失敗はしなかった!という程度でしょうが、、、(笑) 実は、私が困ったのは仕事ではなく、仕事以外の場でした。
1回目の出張は、約2週間から1か月(これ以上長いのは断っていました)でしたが、徐々に徐々に期間が長くなってきて、おしまいの頃には、3か月の時もありました。
そのアメリカでの仕事で、生まれて初めて外国に来た通訳者は、私だけだったように思います。 つまり私は、これ以前に、普通の人達と普通の話しをしたことが殆どありませんでした。
私が遭遇した苦手な状況
私は、長い演説や事務的な言葉(文章)について困ることはほとんどありませんでしたが、アメリカの普通の家庭の子供達や若者達とカジュアルに言葉を交わした事がありません。特に、子供達や若い人達の言葉使いに慣れていなかったのです。
私にとって恐怖だったのは、会議が終わって(何日もかかる長い会議のあとで参加者達と友人関係になり、その人の家を訪問させて頂くことがたまにあり)家族団らんのなかで(特に若い人達や子供達の)話す言葉がよく分からないことがありました) しかし、そこの主人は、私が普通に仕事をやってる通訳者だと認識しているので、私が困っているなんて全く想像もしていないようで、楽しく会話が進んでいると感じていたようでした。
通訳者になるまでみんなどう過ごしてきたのか?
私以外の通訳者達は、子供時代や学生時代にアメリカに住んだことがあったり、アメリカに留学していた人達ばかりで、私の戸惑いや困った様子に気づいた人はいなかったようでした。しかし、もしかして気づいていて、あえて放っておいてくれたのかも知れませんが。
この事は、私の黒歴史です。正しい文章は読み書きできるのに!正しい文章は聞いたり話したりできるのに!私のように日常会話に困る通訳者なんて、その場には誰もいませんでした。 このことは私の黒歴史として、私のトラウマとして心の隅に残っています。
通訳者を辞めたあとで
しかし、その後、通訳の仕事を辞めて、毎日家にいる生活を始めてからは、当然自由時間がたっぷりとあり(言い換えれば、暇で暇で、、、)毎日テレビをつけてドラマや映画を見ていました。昔と違って、勉強ではありません。娯楽です。楽しみです。趣味なのです。言葉が分からなくても字幕があります。「この言葉使いは使える」なんてこと考えながら見るような事はしません。面白いか面白くないかだけです、私の関心は。語句や言い回しに気を取られる事はなく、そのドラマが面白いかそうでないかだけです、私の興味は。
私は、ウン十年ぶりに得た長い自由時間を、ほとんどドラマ鑑賞に費やしていました。そしたら、ドラマの主題、伏線、筋立て、そして俳優達の演技力に魅了されるようになっていました。昔昔、私の子供時代の楽しみが戻ってきていたのです。私は通訳者になりたかったのではなく、ドラマ、映画、小説が大好きだっただけなのです。だから、(こんな歳から英語を学習しても、、、)とか、(通訳者になれるまでの英語力を身につける事ができるのだろうか?)なんて考えてこなかったんです。でも、この事がかえって、私が英語の学習を継続することができた一番のモチベーションだったように思います。(今頃、気づいたんかい?という声が、、、)

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