xiaoguandaozi4さんによる段落テキスト
はじめに: 資格の勉強は「通訳力」そのものを育てる時間です
前回の記事で、通訳の世界にはいくつもの「入り口」があることをお話ししましたね。
英検、通訳案内士、通訳技能検定 ー どれもが英語を学習する人達にとって目標となる資格です。
けれども大切なのは「資格」ではなく、ここを目指して努力する”過程”なのです。 実は、、、この”学習する時間”こそが、通訳者に必要な能力を育ててくれるのです。
今回は、それぞれの資格に向けた学習法を少し具体的に見ていきたいと思っています。
どれも私自身の経験や通訳仲間たちの工夫から生まれた実践的な方法です。
① 英検、TOEIC、TOEFL ー 英語の”地盤”を固める
その確認に最適なのが、英検やTOEIC、そしてTOEFLなどの試験です。
● 英検(特に準1級、1級)
英検は、日本人にとって最もなじみ深い試験です。 出題の幅が広いので、語彙、文法、リーディング、リスニング、スピーキングと、バランス良く英語力を鍛えられます。 準1級であっても内容は高度で、社会問題や抽象的なテーマが多く、「英語で考える力」を磨く良い練習になります。
私自身、英検の過去問を読むたびに「こういう表現もあるんだ」と発見することがあり、それがのちの通訳現場で役立ったこともありました。
過去問を使う時は、正解・不正解よりも「なぜそうなのか」を意識して読むと、自然に英文の理解力が上がってきます。
● TOEIC
通訳志望者にとっても、TOEICはリスニング力強化に良いツールです。実務的な英語に多く触れることで、自然なスピードと音の省略に慣れていきます。 特にリスニングパートを繰り返し聞くと、耳の”チューニング”ができるようになります。
TOEICの学習では、「全文を聞き取ろう」としないのがコツ。 まずは”意味の塊”を捉える練習をすることで、のちの逐次通訳や同時通訳にも役立ちます。
● TOEFL/IELTS
これらの試験は、留学や海外の大学院進学を目指す人達には欠かせない試験です。アカデミックな英文読解力、英語での論理的思考力が求められます。
通訳という仕事は、実はこの「論理的に考える力」が大きな鍵です。 内容を分析し、筋道立てて理解するー それが、発言を正確に訳す基礎なのです。
② 通訳案内士試験 ー 英語と”日本”を両立させる
英語が得意でも、日本の神社や祭り、歴史的出来事を説明できない人は案外多いものです。 そこで、私がおすすめするのは、 ーーー ● 英文ガイドブックを読む (例:「Japan – The Official Guide」など)
● NHKの「にっぽん縦断こころ旅」や歴史番組を英語で要約してみる
● 「日本の四季」「和食」「おもてなし」などのテーマで、3分間スピーチを練習する
こうした練習を続けていくと、英語だけでなく、”語る力”つまり‘表現力‘が磨かれてきます。 私はこの試験の勉強をしていた時、「日本を理解することが通訳への第一歩」だと感じました。
③ 通訳技能検定 ー 実践力を測るトレーニング試験
通訳技能検定は、実際の通訳力を試す試験です。 逐次通訳、同時通訳の両方を評価するため、実務に近い形の練習が求められます。
この試験に向けては、単なる英語学習ではなく「耳と口の連携」を鍛える必要があります。 そのためにおすすめの方法が、”シャドーイング”と”リプロダクション”です。
● シャドーイング:音声を少し遅れて真似しながら発音する。リスニングと発話の同時処理を鍛える。
● リプロダクション:聞いた英文を、自分の言葉で正確に言い直す。理解力と再構成力を高める。
通訳訓練校では必ず取り入れられている訓練法ですが、独学でも十分可能です。
私自身、最初の頃、ラジオのニュース英語を毎朝10分か15分ほどシャドーイングし、半年ほど経った頃には、「英語がそのまま日本語の意味に変わる感覚」が生まれてきていたことを感じました。
④ 独学で続けるための工夫 ー 「資格の勉強」を”習慣”に変える
試験勉強は、どうしても”合格のため”と考えてしまいがちですが、通訳の世界では「勉強を続けること」自体が最も大切なことです。
私が長年の経験で感じたコツが3つあります。
1 時間を決めるより、タイミングを決める
朝のコーヒーの後、寝る前の10分 ー 習慣化がカギです。
2 完璧を目指さず、繰り返す
一度で理解しようとせず、何度も触れることで脳が定着します。
3 小さな成功を記録する
ノートに「今日の発見」を一行だけ書くだけで、継続のモチベーションになります。
こうした小さな積み重ねが、通訳者という大きな夢への確かな道になります。
⑤ 私の経験から ー 試験よりも大切だった”日々の積み重ね”
私はもうじき30歳になるという頃に英語の学習を独学で始め、その数年後には会議通訳者になりました。振り返ると、どの資格よりも役立ったのは「毎日の習慣」でした。
通訳案内士試験に一度で合格した時も、特別な勉強法よりも、”続けること”が何よりの力になったのだと思っています。
試験はあくまで「確認の場」です。大切なのは、試験を受けるまでの過程で、どれだけ本気で自分と向き合えるか、です。資格よりも価値があるのは、「努力の軌跡」そのものなのです。
おわりに ー 資格を”ゴール”ではなく”通過点”に
英語や通訳の資格は、確かに目標として魅力的です。けれども、それを手にした瞬間から新しいスタートが始まるのです。
学ぶことに終わりはなく、むしろ通訳者になってからの方が、学びの連続です。 資格はあくまで”通過点” ーー あなたの努力を形にするひとつの節目です。
どんな資格を目指すにしても、そこで培った力は、必ず人生のどこかで役立ちます。 どうか焦らず、自分のペースで進んで行ってください。 英語の学びは、人生を豊かにする最高の旅のようなものです。
通訳の世界は、確かに狭き門です。けれども、英語が好きで、地道に努力を重ねられる人なら、必ず道は開けます。
私自身、最初は「こんなレベルで通訳なんて」と思っていたのですが、続けけているうちに、少しずつ自分の中に”英語で考える回路”ができてきました。
もしあなたが「自分には無理かもしれない」と感じているなら、どうかどうか諦めないでください。今、通訳という目標が遠くに感じられていても、日々の小さな努力が確実にあなたをそこへ導いてくれます。
英語の学習を通して見える景色は、想像以上に広く、深いものですよ。

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