英語を勉強している人の中には、「せっかく身につけた英語を役立ててみたい」と思う方が多いのではないでしょうか?そして、そんな時に思い浮かぶのが「英語を使ったボランティア」や「通訳ボランティア」という活動ではないでしょうか?
私自身、プロの会議通訳者として30年ほど仕事をしてきましたが、その時に、学生さんや主婦の方が参加するボランティア通訳の方がいる現場を何度も目にしてきました。また、現役の通訳者でありながら、本職の仕事の合間をぬってボランティアとしても活動している通訳者の仲間もいました。
今回はこのような経験をふまえて、初心者の方にも分かりやすいようなお話しをしてみようと思います。
今回の記事を読み終えた時に、「あ、私にもできるかもしれない」と少しでも感じて頂ければ嬉しいです。
英語を使ったボランティアの魅力
「ボランティア」という言葉から最初に連想するのは、地域の清掃や福祉活動かもしれません。しかし、最近は、英語を使ったボランティアがとても増えているのです。
例えば:
● 空港で外国人観光客に対する案内のボランティア
● 地域のお祭りでの通訳ボランティア
● 医療現場での英語サポート
● オンラインでの英語学習サポート
どれも、「特別な資格をもっていなくても始められる」という点が魅力です。しかも「英語を話せるようになりたい」と思っている方にとっては、実践の場として最高のチャンスでもあります。
通訳ボランティアの第一歩 ー 「おもてなし英語」から始めよう
「通訳ボランティア」と聞くと、難しい国際会議の場面を想像してしまい、ハードルが高そうに思えるかもしれませんね。
でも実際には、通訳ボランティアの多くは「観光案内」や「簡単な道案内」から始まるものです。例えば、東京オリンピックの時に活動した通訳ボランティアの多くは、
● 駅で「どこへ行きたいのですか?」と英語で声をかける
● 会場で「入口はこちらですよ」と案内する
といったシンプルなやりとりが主な仕事でした。
英語初心者の方でも、こうした「おもてなし英語」なら、気軽に挑戦できるのではないでしょうか?
大切なのは完璧な文法よりも、笑顔と勇気。 多少文法が間違っていても、相手に伝えようとする気持ちがあれば十分なのです。
英語ボランティアでよく使うフレーズ集
初心者が通訳ボランティアを始める時に不安なことが、「とっさに英語が出てこない」という事です。そこで、私がこのような現場で役立つと感じた、最も基本的なフレーズをご紹介しましょう。
● Can I help you ?(お手伝いしましょうか?)
● This way, please. (こちらへどうぞ)
● The restroom is over there. (トイレはあちらです)
● Do you need an interpreter? (通訳が必要ですか)
● Please wait a moment. (少々お待ちください)
これだけの英語で大丈夫です。通訳ボランティアの現場では十分に役立ちます。 まずは短いフレーズを繰り返し練習して、口から自然に出るようにすると安心ですよ。
元会議通訳者から見た「ボランティア通訳の意義」
私が会議通訳者をしていた頃、ボランティア通訳の方と同じ現場に入ることが幾度かありました。 その時に感じたことは、「プロとは違った温かい雰囲気」でした。
プロの通訳者は、もちろん正確でスピーディーな仕事をしなくてはなりません。しかしボランティア通訳の方の、相手の目線に立ち、ゆっくりと丁寧に伝えようとする姿勢がとても印象に残りました。 外国から来られた人達にとって、それはなによりの安心材料になるものなのです。
英語や通訳のスキルが完璧でなくても、心からの対応が人を感動させる、、、。これこそが、ボランティア通訳の大きな意義だと私は思っています。
英語初心者でもできるボランティア通訳の場面
「自分の英語力では無理」と思う方も多いようですが、実際には初心者だからこそできる場面もあるのです。
例えば、
● 外国人観光客に地図を見せながら道順を教える
● 地域のお祭りで、出店の食べ物を簡単に説明する
● 公民館の国際交流イベントでの自己紹介をサポートする
こうした画面では、難しい通訳技術よりも「フレンドリーな会話力」が求められます。 つまり、中学英語レベルでも十分活躍できるのです。
英語の通訳ボランティアを続けることで得られる成長
1 リスニング力が伸びる
生の英語に触れるので、教材では学べない発音やスピードに慣れます。
2 度胸がつく
「間違えても何とかなる」という経験を重ねることで、人前で英語を話す勇気が自然と身に付きます。
3 表現力が広がる
その場で工夫して伝えることを体験していくうちに、自分の英語表現が豊かになります。
私自身、プロになる前にこうした場を経験していたら、もっとスムーズに上達できただろうなぁと思うこともあります。
通訳ボランティアを始めるには?登録方法と準備作業
「やってみたいけど、どうやって始めればいいの?」という方に向けて、その流れを整理してみます。
1 地域の国際交流協会を探す
多くの市町村には「国際交流協会」があり、ボランティア通訳を募集しています。
2 オンライン募集に応募する
東京オリンピックのような大きなイベントだけでなく、小さな地域イベントでも募集をしています。
3 自己紹介と簡単な面接
英語力を厳しくテストされるわけではなく、「やる気」が評価されることが多いです。
準備としては、前述した基本フレーズを覚えたり、英語の自己紹介を練習しておくと安心です。
英語・通訳・ボランティアの体験談 ー 仲間のエピソードから
通訳仲間から聞いた、心温まるボランティア通訳の体験をご紹介しておきましょう。
ある女性は、地域の病院で通訳ボランティアをしていました。
最初は「専門用語がわからない」と不安でいっぱいでしたが、患者さんから「あなたがいてくださって安心しました」と言われ、大きな自信につながったそうです。
また別の人は、観光ボランティアで外国人の家族を案内したとき、こどもたちと英語で遊びながら会話をして、とても楽しい時間を過ごしたそうです。「教科書の英語ではなく、生きた英語を楽しめた」と話していました。
プロ通訳者から見た「ボランティアで学ぶ姿勢」
私は会議通訳の現場で、何度も「完璧でなければならない」というプレッシャーを感じることがありました。
その点、ボランティア通訳には「失敗しても大丈夫」という暖かさがあります。
でも実は、その「失敗してもいい」という環境こそが、学びに最適なものなのです。プレッシャーがないからこそ、自然に力が伸びる。そして、楽しみながら英語を使える。
これは、プロ通訳者である私にも、非常に大切な気づきでした。
これから英語の通訳、ボランティア通訳を始めたい方々へ
最後に、これから英語の通訳、ボランティア通訳を始めたいと思っている方へのメッセージを!
● 完璧な英語を話す必要はありません。
● 間違えても、笑顔と気持ちがあれば伝わります。
● 小さな一歩が、大きな成長につながります。
私が約30歳から英語を学習し始めて、会議通訳者として働くようになったのも、「小さな一歩を重ね続けてきたからに他なりません。」
読者の皆様も、まずは「英語を使うボランティア」に挑戦してみませんか?
英語の通訳者とボランティア通訳がもたらす、人生の小さな奇跡
ここまでお伝えしてきたように、英語を学習すること、通訳という役割を担うこと、そしてボランティアを通じて人の役に立つことは、互いに深くつながっています。英語があるから通訳者が生まれ、通訳があるからボランティア活動の幅が広がり、ボランティアがあるから人と人とが結びついていきます。
私自身、通訳者という仕事をしてきた経験があるからこそ、言葉がただのツールではなく、「人を助けるための架け橋」になり得ると信じています。英語を話せることは、自分の人生を豊かにするだけでなく、他の誰かの人生に光を当てることができるのです。
例えば、私が通訳者として、ある会議場で働いていた時、ボランティア通訳の方に遭遇したことがあります。その現場では、ボランティアさんは身体の調子が悪くなった人を、病院まで付き添って行ってあげていたりしていました。派手な舞台に立つ仕事でなくても、そこに「安心」をもたらす事ができたのは、このボランティア通訳さんの立派なお仕事のおかげでした。
通訳ボランティアの現場には、時に即興力や柔軟性が試されることがありますが、それこそが「生きた英語力」を育ててくれるのだと思います。そしt、このような経験は必ず自分の財産になります。
最後に、この記事を読んでくださった方へ
「英語を学習したいけど、自分なんて無理かも、、、」と思っている方もいらっしゃるかも知れません。けれど、通訳やボランティアの世界は、完璧な英語を話す人達だけのものではありません。むしろ、心をこめて相手に寄り添おうとする気持ちがあれば、たとえ拙い英語でも、立派に人の役に立てるのです。
英語を学習することは、自分自身を育てる旅なのです。通訳者としての挑戦は、その旅のひとつの形です。そしてボランティアは、その旅で得たものを分かち合う場です。英語と通訳、そしてボランティア、この3つが組み合わさることで、人生に小さな奇跡が生まれるのだと、私は信じています。
ですから、どうか一歩を踏み出してみてください。小さな一歩でも、必ず誰かを助ける力になります。そしてその時、あなたはきっと、英語を学習してきて良かったと、心から思うはずです。
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